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会社説明会

AI活用は“思いつき”ではない 〜久野金属工業が描いた未来地図〜

AI時代への備えは、数年前から始まっていた

AI時代を迎えるにあたり、当社では2020年から、将来を見据えた業務構造の見直しと情報基盤の整備に着手してきた。

自動車・産業用部品の精密プレス加工を一貫体制で担う当社は、AIサービスが一般化する以前から、「AI活用を前提とした業務構造」への転換を中長期的な経営テーマとして位置づけてきた。

その背景には、人口減少や少子高齢化、製造業全体における慢性的な人材不足といった、避けて通れない構造的課題がある。

同時に、AIや業務自動化技術は一時的な流行ではなく、産業のあり方そのものを変える技術であるという認識があった。

「AIを本当に活かすためには、導入そのものよりも、その前段階の準備が重要だと考えていました」

そう語るのは、AI活用を経営テーマとして推進してきた副社長だ。

 

知識を蓄積し、AIを“使える状態”にするという発想

当社では、営業、生産、品質管理、事務といった各業務における重要な知識や判断材料を、社内で一元的に管理・蓄積してきた。

これは、将来AIが業務に組み込まれることを前提とした「知識の集約」を目的とした取り組みである。

業務マニュアルや作業手順はデジタル化され、設備の稼働状況、停止要因、過去のトラブル履歴といった現場データも体系的に整理されている。

これらの情報はすべて、AIが学習し、適切な情報提供や判断支援を行うための基礎データとなる。

当社の中期方針においても、「業務のマニュアル化と技術・技能伝承の推進」は明確な重点項目として位置づけられており、現場改善にとどまらない経営戦略の一環として取り組まれている。

 

判断は人が行い、AIはその判断を支える

副社長は、当社におけるAI活用の考え方をこう説明する。

「AIは膨大な知識を瞬時に提示できますが、最終的な判断を下すのは人です。だからこそ、AIが提示する情報の質を高めることが何より重要だと考えました」

そのため当社が重視してきたのは、「誰かが特別な作業をしなくても、日々の業務の中で自然に知識が蓄積されていく仕組み」をつくることだった。

これにより、過去の失敗事例や発生頻度の低いトラブルについても、AIが把握し、将来の判断材料として提示できる状態を整えている。

AIを活用するうえで重要なのは、単に導入することではなく、正しい知識を継続的に与え続けることにある。

知識の集約と伝承を効率化する手段として、AIは大きな役割を果たす。

 

製造現場におけるAI活用と中期的な目標

AIはすべての仕事を代替する存在ではない。

当社では、人が担ってきた半自動化ラインの作業について、ロボット技術やAIを活用し、「人が行っていた部分」をAIが担う体制を、2〜3年以内に達成すべき中期的な目標として位置づけている。

この取り組みにより、生産効率の向上に加え、熟練工の技術継承や業務の属人化解消といった、製造業が直面する構造的課題の解決を図っていく。

また事務部門においても、定型業務の自動化を進めつつ、頻度は低いが判断が難しい業務や、経験に基づく対応が求められる業務については、人とAIが役割を分担する体制を構築していく。

 

すでに稼働する20種類以上の専用AI

当社ではすでに、営業、製造、品質、事務など各業務に特化した20種類以上の専用AIを開発・稼働させており、日常業務における情報提供や判断支援に活用している。

これらのAIは、過去の事例や蓄積された業務知識をもとに助言を行う、いわば社内の経験豊富な相談役として機能している。

特定の業務や判断領域に特化しているため、現場の実務に即した形で活用できる点が特長だ。

このようなAI活用が実現している背景には、数年前から進めてきた情報整理と業務基盤の整備がある。

AIを「導入するもの」ではなく、「いつでも業務に組み込める状態」にしておくことが、現場に無理のない活用につながっている。

 

AI活用の成否を分けるのは、経営判断

最後に、副社長はAI活用が進まない企業に共通する課題として、「経営判断の曖昧さ」を挙げる。

「AIの有用性を感じていても、経営として本気で向き合わなければ、現場には根づきません。自社で触り、理解し、何を解決したいのかを考えることが不可欠です」

当社は、製造業の未来を「人の判断力」と「AIの情報処理能力」が補完し合う姿として捉えている。

その実現に向けた取り組みは、すでに中期的な経営構想として明確に位置づけられ、着実に前進している。

記事制作者:AI社員くん